『ビスケット』(読書感想文)

うさこの本棚

はじめに

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 先日、図書館で本をまとめ借りしまして、今日はその中の本で特に面白かった小説を紹介します。

『ビスケット』キム・ソンミ著、矢島暁子訳、飛鳥新社

 久しぶりに県立図書館に行った際に、青少年のおすすめ本棚から目に留まった一冊。なぜか目が表紙から離れなくなり、当初の目的とは違う本だったものの、どんなに大人になっても児童文学が好きなこともあり手に取った。

 聴覚過敏症の男の子が、社会から阻害されて自尊心を失い、存在感の消えかけたビスケットという存在を救う物語だ。

 主人公のジェソンは、他の人が氣が付かない物事に氣付いてしまう特異性が故に、周囲から理解が得られない孤独と静かな怒りを抱えている。そして自分自身の特性が両親の関係や感情を波立たせてしまうことにも少なからず悲しみを感じながら毎日をやり過ごしていた。そして、そんな自分を守るかのように、ビスケットを脅かす社会の存在に静かに敵意を燃やして小さな復讐を繰返していた。

 10代の少年では解決しようのない大人たちの事情の中で、それでもそんな親達を想う主人公の優しさが切なかった。その子どもとしての氣持ち、分かるなあ。子どもがどんなに親の幸せを願っても、親はそんな子ども自身の願いや愛になんて氣付かなくて、子どもを「世話してやっている」存在としか捉えていない。それに、親自身に幸せになる意思がないなら、結局それは叶わないんだけれども。

 子どもの願いは永遠に叶わない。叶うことはない。

 だから、その切実な願いと、現実への無力感や落胆を見えない心のうちに抱えて生きている主人公にそっと共感して、そっと泣いた。

 この理解され難い少年に寄り添って力を貸してくれる大人達もいいんだよなあ。出番は少ないんだけど、大切なことを伝えてくれる。

 「ジェそん、どうして私がパク看護師に謝れって言ったかわかる?自分だけが正しいと思っていると、悪い人になっちゃうからだよ」
 「僕が悪い人だってことですか?」
 「悪い人になるかもしれないってこと。少なくとも、あんただけが正しいと思ってたらね」

『ビスケット』キム・ソンミ著

 わたしの両親や親戚関係は自分だけが正しいと信じ込んでいる人達の群れで、かと言って彼らの態度に疑問を呈したい自分が独善的な姿勢になるおそれもあるし、とちょうど考えていたので、この用務員のおばさんの言葉が胸に残った。

 そして彼の幼馴染である仲間達もいい。最後は少し希望を感じられて、それも現実的な範囲に収まって、いる、とわたしは想うんだけど、そんなところもよかった。

 本書は中高生の圧倒的な支持を得て、第一回ウィズダムハウス子ども青少年ファンタジー文学賞の青少年部門大賞を受賞し、更に2024年には、韓国全土の図書館司書がその年の一冊を選ぶ新丘文化賞「今年の本」も受賞したそうだ。

 それも分かる氣がする。

 柔らかくて繊細な、そして時に過敏な感性を持つ人が本書を読んでくれたら、心のどこかでほっとできる小説なんじゃないかなと想う。

まとめ

うさこ
うさこ

 わたしはK-POPが大好きなんですが、そこから好きなアイドルが主演している韓国の歴史ドラマを見て、韓国の歴史や文化にも興味を持つようになりました。

 本書の中にも折に触れて現代の韓国社会特有の風習や流行歌、近現代の歴史が垣間見える箇所があり、お隣韓国の社会のことを少し覗いて見ているような氣持ちにもなりました。韓国の学生の間で、暴力を伴ういじめが頻発している話も耳にすることがあり、そんな風潮もビスケットを生む背景になっているのかなあと想像します。

 本文中に出てくるのですが、韓国では、トロットと呼ばれる大衆歌謡がK-POP以上に人氣だそうで、「みなさん、また残業して帰らないの」とか、歌詞が日常的過ぎて笑っちゃう内容です。そんなことを調べていたところ、2025年に開催された「日韓歌王戦」なるものに行き着きました。韓国のトップ7の歌手もすごい実力者揃いだったけど、日本のトップ7とその他の歌い手に心を揺れに揺さぶられたわたくし。歌が上手だとどんな歌も素敵になるわあと、心が洗われた氣持ちになりました。

 わたしは日本のトップ7全員が好きですが、その中でも特にTAKUYAくんとSHUくん、そしてお仕事の都合で途中辞退しトップ7にはならなかった演歌歌手の二見颯一くんが好きです。TAKUYAくんと二見颯一くんのバチバチの一対一対決が好きで、全然聴かないあいみょんの『愛を伝えたいだとか』が大好きになってしまった。日韓の歌手が相互に交流してきた経過があるようで、芸能面での相互交流がある流れもいいなと思いました。

 本書とは全然関係ないんだけど、一冊の本から広がる世界って本当に広大ですね、という無理くりな落ちでした。

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